この記事でわかること
・温泉分析書とは何か、どこで見られるか
・記載項目ごとの読み解き方
・「加水・加温・循環・消毒」の確認ポイント
・泉質名から読み取れる情報
・適応症の正しい理解と注意点
温泉旅館の脱衣所や浴室の壁に、小さな文字で書かれた書類が掲示されているのを見たことはありませんか?それが「温泉分析書」です。
多くの方はその前を素通りしてしまいますが、実はこの一枚に、その温泉の素性がほぼすべて記されています。泉質、温度、成分など——源泉かけ流しを見分けるための重要な手がかりが、ここに集約されています(加水・加温・循環・消毒の有無は、分析書とあわせて浴室内の掲示で確認します)。
この記事では、温泉分析書の基本的な構成と、初心者でも押さえておきたい読み解きポイントを解説します。
温泉分析書とは
温泉分析書とは、温泉法に基づき、温泉を利用する施設が掲示を義務づけられている公式書類です。指定の検査機関が源泉の成分を分析し、その結果を記載したものになります。
掲示が義務化されている理由は、利用者が「自分が入っている温泉がどういう成分で、どう管理されているか」を知る権利を保障するためです。
分析書には有効期限の考え方があり、成分が変化することもあるため、定期的に再分析が行われます。掲示されている分析書の日付を見れば、その情報がいつ時点のものかが分かります。
分析書はどこで見られるか
- 脱衣所の壁
- 浴室の入口付近
- フロントや帳場
- 宿によっては公式サイトに掲載
到着時にすぐ確認できなくても、チェックインの際にフロントで聞けば見せてもらえることが多いです。気になる宿があれば、訪問前に公式サイトで掲載されていないか探してみるのもおすすめです。
記載項目を読み解く
① 源泉名・湧出地
その温泉がどこから引かれているかを示す情報です。同じ温泉地でも、宿ごとに異なる源泉を持っている場合と、共同の源泉から配湯を受けている場合があります。
複数の宿が同じ源泉名を記載している場合、その源泉から配湯を受けている可能性が高いです。
② 泉質名
「単純温泉」「含硫黄-ナトリウム-塩化物泉」のように、含まれる成分によって分類された名称です。
泉質名は、溶存物質の量や主成分によって決まります。たとえば名称に「硫黄」が含まれていれば硫黄成分が、「塩化物」が含まれていればナトリウムや塩素イオンなどの塩分系成分が、特徴的に含まれていることを示します。
泉質ごとの詳しい違いについては、→【近日公開】「療養泉とは|温泉法が定める『効く温泉』の基準」で解説します。
③ 泉温(湧出時の温度)
源泉が湧き出る時点での温度です。この数値が、その宿が加温・加水を行う必要があるかどうかの手がかりになります。
- 体温より高く、入浴に適した温度(おおむね40℃前後)であれば、加温の必要性は低くなります。
- 40℃を大きく下回る場合、加温が行われている可能性が高くなります。
- 50℃を大きく超える場合、加水によって温度調整が行われている可能性が高くなります。
④ 温泉の成分(pH値)
温泉の酸性・中性・アルカリ性を示す数値です。
- pH3未満:酸性が強い
- pH6〜7.5程度:中性
- pH8.5以上:アルカリ性
酸性の強い湯は刺激が強く、アルカリ性の湯は肌がつるつるする感覚(いわゆる「美肌の湯」)として知られています。
⑤ 溶存物質量(成分総量)
1kgあたりに溶け込んでいる成分の総量です。この数値が多いほど、濃度の高い温泉であることを示します。
加水によって成分が薄まると、この数値も実質的に低下することになります。分析書に記載されている数値は分析時点でのものなので、加水の有無・量についての記載と合わせて確認することが大切です。
⑥ 適応症
温泉法に基づき、その泉質が示す適応症(一般的にどのような症状に効果が期待されるとされているか)が記載されています。
これは「この温泉に入れば治る」という意味ではなく、温泉法上、この泉質にはこうした適応症が記されているという位置づけで理解することが大切です(個人差があり、医療行為の代替にはなりません)。
⑦ 禁忌症
適応症と並んで記載される項目で、その泉質の温泉に入ることが適していないとされる症状や状態を示します。
たとえば、急性疾患(特に熱のある場合)、活動性の結核、悪性腫瘤、重い心臓病、呼吸不全、腎不全、出血性疾患、高度な貧血、その他一般に病勢進行中の疾患などが、禁忌症として挙げられることが一般的です。妊娠中の方についても、注意が必要な場合があるとされています。
適応症が「期待される効果」を示すのに対し、禁忌症は「避けるべき条件」を示すものです。持病がある方、通院中の方は、入浴前に分析書の禁忌症欄を確認し、不安がある場合は医師に相談することをおすすめします。
加水・加温・循環・消毒の確認方法
温泉分析書そのものは「源泉の成分」を示す書類であり、加水・加温・循環・消毒の有無を直接記載するものではありません。これらは別途、浴室内の掲示で確認する必要があります。
ただし、温泉分析書に記載された「採取地の温度(泉温)」と、実際に浴槽で感じる温度を比べることで、加温・加水が行われていそうかどうかを推測する手がかりにはなります。
正確な情報を得るには、必ず浴室の掲示も併せて確認しましょう。掲示には以下のような項目が記載されているはずです。
- 加水の有無(理由を含む)
- 加温の有無(理由を含む)
- 循環ろ過の有無(理由を含む)
- 消毒の有無(理由を含む)
「加水なし・加温なし・循環なし・消毒なし」のすべてが満たされていれば、完全な源泉かけ流しです。
分析書を見るときの注意点
① 日付を確認する
温泉の成分は時間とともに変化することがあります。分析書の日付が古い場合、現在の湯質と多少異なる可能性も考慮しましょう。
② 一つの宿に複数の分析書がある場合
大規模な宿では、複数の源泉を持ち、浴槽ごとに異なる源泉を使っている場合があります。その場合、浴槽ごとに分析書が掲示されていることもあるので、気になる浴槽がある場合は対応する分析書を探してみましょう。
③ 数値だけで「良い・悪い」を判断しない
溶存物質量が多いほど良い、pHが低いほど良いといった単純な優劣はありません。泉質にはそれぞれ個性があり、自分の好みや目的(リラックスしたい、肌の刺激を求めたい等)に合わせて選ぶことが大切です。
まとめ
- 温泉分析書は、温泉法に基づき掲示が義務づけられた公式書類
- 源泉名・泉質名・泉温・pH・溶存物質量・適応症・禁忌症などが記載されている
- 加水・加温・循環・消毒の有無は分析書ではなく浴室内の掲示で確認する
- 泉温と実際の湯温を比較することで、加温・加水の可能性を推測できる
- 数値の優劣ではなく、自分に合った泉質を見つける視点を持つことが大切
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